[ReVieW] Assassin's Creed IV BLACK FLAGでカリブ海の悪魔になる!

 今回紹介する『Assassin's Creed IV BLACK FLAG(以下ACIV:BF)』は,”アサクリ”据え置きハードシリーズでは6作目のゲームですが,主人公は前作のコナー(ラドンハゲードン)の祖父であるエドワード・ケンウェイとなり,主人公は変わりましたがケンウェイ・サーガとしてつながっています。


先ず評価したいのが,この作品を世に送り出してくれたことでしょう。日本の一部のファンからはやはり「Assassin's Creed IIがよかった」という話が出ますし,売り上げも作品を重ねるごとに減少していたような……。そんな中で続編を作ってくれたのがやはり嬉しいですね。
本題に入りましょう。

コンポーネント(HUD,音楽の質とオリジナリティ,グラフィック,ストーリー,技術など):5/6pt.(よい)

海戦の果てに敵船に乗り込むときのこちらの身を奮い立たせるような音楽や,酒場の陽気な雰囲気の伝わってくる歌,そして航海の中で聞こえてくる船員たちの様々なシー・シャンティ……! これらの音楽面は非常に海賊然とした世界づくりに貢献していて,最高に大海賊時代の空気に浸らせてくれるパーツです。今回のアサシンの墓所のかわりである海中探索も,密輸業者のアジトにつながっていたりと雰囲気抜群です。
 グラフィックも十分。ただし,現行機での描画エンジンでは多少モブの描写が間に合わないこともあり,ゲームプレイの障害になりかねなません。実例として,ミニマップではいるはずの敵兵が描画されておらず,不意に目の前にそれが描画され発見状態になったことが一回だけありました。樹の葉がポコポコ生まれてくるように描画されるのも現行機だと前作と変わらず。
 ストーリーは驚くようなことがあまりありませんでしたが,エドワード・ケンウェイ編の後味はいい余韻を感じられました。現代編のせいでストーリーにはあまりいい印象がありません。気分を害するようなストーリーというわけではなく,ただあまりに単調なのです。
 PS3版を遊んでいるためアヴリーンDLCもプレイしましたが,きちんとアサシンはアサシンらしく描くということを意識されているようで,本編とは違った女性らしいモーションやコナー時代の雰囲気がよく感じられました。
 最後にお伝えしたいのが,オープンワールドとしての素晴らしさです。初回の起動に際してのロードは非常に時間がかかりますが,そのかいあってか島の桟橋から船にのり,舵をとって海に繰り出して商船を略奪して手配され,海賊ハンターから逃げつつ航海を続けていたら嵐に遭遇し……という流れの合間にロード画面はありません。これには本当に驚嘆させられました。一切のロードがないのです!

プレイアビリティ(複雑すぎないか,流れはよいか,システムは適切か):3/6pt.(若干システムに不備や不明瞭な点がある)

暗殺の仕方は前作より簡単になっていて,前作で難化したダブルアサシンがとてもやりやすくてストレスフリーです。しかし,メモリーを進めていく上で”いかに本人らしさを再現するか”という世界観に浸れる要であるサブメモリーに関する不明瞭な点がわずかに多いです。前作より暗殺の幅がとても広がり,傑作として名高いエツィオ・サーガのように非常に多くの暗殺方法があるのはとても素晴らしい方向転換だったと思います。しかしながら,その中でサブメモリー達成に必要な消耗品が暗殺コントラクト中に作製できない時が稀にあるというのはいかがなものかと思います。これでは半ばコントラクトの中止を促しているようなものです。
 交易についても不明瞭な点が多いです。オフラインでは絶対にプレイできないことが先ず欠点で,今回は金策に困るというとてもいい体験があるのですが,交易ができないプレイヤーはソリューションを一つ失っていることになります。これは大変よろしくないと思われるため,ひとつ欠点としてあげさせていただきます。繰り返しますが,お金に困るというのはアサクリシリーズにとってとても良いバランス調整です。

インタラクション(ひとりプレイか,相互に関わりあってプレイできるか):5/6pt.(相当にインタラクティブである)

マルチプレイは相変わらず鬼ごっこですが,私は『ACBH』で初めてアサシンクリードのマルチプレイを体験して以来,この鬼ごっこゲームの虜です! 加えて,前作より導入されたウルフパックもとても楽しいゲームモードです。
 シングルプレイにおいても,多少のインタラクションが見込めるので最低限評価できます。また,フレンドがいなくとも全世界の中でのランキング(たとえば裕福な海賊ランキング)が確認できるため,秘めたるものがあります。
 また,私の大好きなウルフパックセッションについてはシーケンスに種類が増え,新しいプレイ体験を得ることができました。

意図的介入(運の要素が強いか,戦略的か):5/6pt.(ほとんど思考ゲームといえる)

敵兵の巡回経路が決まっていて,加えてランダム配置もないため,いかに自分の思うように暗殺をするかを思考しながら暗殺を進めることができます。また艦隊戦においても,臼砲を撃ってから突進して重砲,樽爆弾を撒いて最大船足で離れるなどいくつかの戦略的パターンを練ることができますし,これらの航海を高速移動で回避することも選択できます。
 マルチプレイにおいても,身の振り方は経験者がとても上手いのは当たり前ですし,アビリティを使わなくともターゲットを特定するベテランプレイヤーの思考力・洞察力は見ているだけでもワクワクするものです。しかしながらこうしたインタラクションには運の要素はつきもので,特に初心者というイレギュラーによる運要素の持ち込みは時に情勢を動かす力をももつものです。

魅力(どれくらい楽しいか):5/6pt.(とても気に入った)

やはり暗殺コントラクトの自由度がとても気に入りました。海戦も楽しく,嵐に飲まれ竜巻を回避しながら戦列艦と対峙するのはスリルのあるものです。海中の沈没船の探索もとても楽しめました。空気樽によってきちんと順を追えるように設計されていて,苦手な人にも楽しめるような工夫が少しみてとれたのも良い点です。しかし,リピート性はありません。もう一度ストーリーをやりたいかと言われたらそうではなく,もう一度チャレンジしたいメモリーも一種類のみでした(今回はメモリーごとに評価をフィードバックする機能があるのですが,最高の星5つを出したのは一つのみでした。)。

総評:75.9点(99点中)(素点:23/30pt.)

以上5つの分類で6点満点評価をしたものを,3.3倍したものがこの点数です。100点のゲームはありません。それだけで一生遊べるゲームは存在しないからです。また当たり前ですが,この点数は非常に主観が入っているためこれのみを鵜呑みにせず,様々なレビューを通してこのゲームについて考えて下さるきっかけとなれば幸いです。
 シリーズ経験者への購入を特におすすめします。シリーズ未経験者もぜひおすすめです。現代編のストーリーは大変に難解ですが,製作の内情を鑑みれば再スタートした作品のような位置にあるのがこのゲームなので,特に難しいことは気にせずプレイして構いません。気になったら過去作をどうぞ。



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