[ReVieW] Batman:Arkham Origins(バットマン アーカム・ビギンズ)でメリー・クリスマス!

 今回は『Batman:Arkham Origins』のお話です。シリーズ三作目,もうエンターテイメント回ではおなじみなのか「三作目で過去に戻る」ということをアーカムシリーズでもやってくれました。前作まではキャラゲーを脱出したアクションゲームとしてのバットマンでしたが,今回はどうなのか。前二作をやっている上でのプレイレビューです。




コンポーネント(HUD,音楽の質とオリジナリティ,ストーリー,グラフィックなど):3/6pt.(合格点)

全般的に,前作『アーカム・シティ』と同じです。そこがよくもあり,悪くもあります。
 まずHUDについて悪い点は,経験値バーが非常に見にくいです。もうちょっとなんとかならなかったのでしょうか。 太くするとか,無駄に光らせないようにするとか。他の面については問題ありません。
 音楽についてはまったく耳に残るものはありませんでした。ストーリー演出で印象に残る音楽があったりしても良いのですが,前作をプレイしている分真新しさはありません。そればかりか 犯罪者を殴ったときのSEが弱くなっており,前作『アーカム・シティ』のときのような爽快感がありません。
 オリジナリティについては,このゲームの特徴からいってストーリーにはほぼなくなってしまうのですが,その中でもバットマンの噂が立ち始めてから有名になり,ゴードンとの信頼関係もなくアルフレッドとは意見が分かれ,ジョーカーがバットマンに執着し始める部分やハーレー・クィンの成り立ちまで,よくまとめあげたなといった感触はありました。エレクトロキューショナーとはいったいなんだったのか……。 加えて,ベインが原作よろしく頭の切れる人物っぽい様子もわずかですが描かれており,そこに好感がもてました。ベイン戦もよかったですね。マップは広さを感じましたが,どこの地区もあまり代わり映えしないですし,加えて前作のテクスチャの使い回しが多いのであまり好きではありません。建物同士の密着度が下がったのは嬉しい人もいるのでは。そのおかげかランダムイベントは分かりやすくていいですね。ゴッサムシティだからといって,発生しすぎな気もしますが……。
 グラフィックは前作同様です。人物の造形が少しよくなったかなという程度。
 プレデターマップについては,今回は何度も何度もやりたい面白いマップが少なかったかなという感想です。かなり見通しがいいというのと,前作の博物館のような立体さがあるものがないのが惜しいです。
 今回一番楽しかったのは捜査ビジョンでの現場再現ですね。現場検証を勝手に始めるのはいつものバットマンなのですが,それがきっかけとして各ヴィランのサブイベントにつながっていますし,それぞれがとても面白い。ただ遺留品をスキャンするだけでなく,事故現場を再現してイメージ映像を繰り返し再生しながら「実は事故じゃなくて撃たれたのであればここらへんに証拠品が……いや無いな,もう一度再現シーンを再生してみるか」と探していけるのが好みでした。

プレイアビリティ(複雑すぎないか,流れはよいか,システムは適切か):3/6pt.(若干システムに不備やバグがある)

発売当時のプレイヤーたちの感想を見てみても,やはり「次にどこへ行ったらいいのか分かりにくかった」というものがありました。これは私も実感したことなのですが,イベントが終わって建物の中に取り残された(あのバットマンが本当に取り残されたという感じなのです! )とき,どうやって外に出るものかとかなり悩みました。ストーリー全体を通しては三回ほどこういったことがありました。MAPが少し見づらいというのが原因でしょう。また,最初のステージから多くのガジェットを使うわりには説明が少なく,前作までとくらべて敷居が高いのではないかという印象も受けました。ここに関してですが,敷居が高いわりにはストーリー上ではさほど難しいガジェットを使っての謎解きがなかったのは残念でした。
 また,ボス戦についてものっけからQTEのようなものが来てしまい,演出はかっこよく映画のワンシーンのようなものが見られるのはいいのですが,失敗すると痛手を受けるこのQTEというシステムは本来的に運の要素が強いため好みではありません。
今回のアクションのアンロックはツリー型なのも前作と較べ劣っている点かと思われます。なにを強化すればいいのか迷ってしまって攻略サイトを調べてしまうような人も結局迷うようなツリーですし,好きなところから強化できた前作の形式が好みだった人からも好まれません。同じく前作からのファンに慣れない点としてガジェットを使用するボタンが変わった上にコンフィグで変えられない点でしょう。
 ガジェットと言えばプレデター,コンバットともに強力なガジェットがあるため,シリーズ初めてのプレイヤーにとって心強いのではないでしょうか。特にショックグローブはかなり心強いですね。これだけで盾持ちやスタンバトンも怖くなくなります。結局一番嫌らしいのは刃物使いということに。

インタラクション(ひとりプレイか,相互に関わりあってプレイできるか):3/6pt.(ときたまインタラクティブである)

基本的にソロプレイですがマルチプレイが今作から追加されました。とても魅力的なマルチプレイですが,サーバーが悪いのかマッチングができません。プレイしようと思って数回セッションに参加することを試みましたが,最終的にフリーズして遊ぶことは叶いませんでした。今後改善されれば適正な評価がされていくでしょう。

意図的介入(運の要素が強いか,戦略的か):6/6(純粋な思考ゲーム,運の要素はない)

敵の配置も決まっていますし,自身がやれることをどの段階でどうするかというRTAも考えられ,お決まりのチャレンジのランキングなど極める要素が非常に高い位置にあります。ここは前作までと同様です。

魅力(どれくらい楽しいか):3/6pt.(よいゲームだがやや見劣りする)

バットマンになりきるという点と,クリスマスの日にヴィランを倒すために活躍するお金持ちというコミカルさ,ゴッサムのバットマンの始まりがとても魅力的ですね。今作はアルフレッドとのやりとりがとても印象的で,そこを推しても良かったのではと思うほどです。推されていたデスストロークはとてもかっこいいのですが,QTEでなく前作の例のあの人のように出てきてほしかったかなという気持ちがあります。
 こうして前作とくらべられてしまうのがシリーズものの常ですが,どうしても楽しさという魅力で見劣りするかなというのがこれまであげてきたいくつかの点から得られた感触です。

総評:59.4点(99点中)(素点:18/30pt.)

5つの観点からポイントを集計し,3.3倍して99点満点で点数をつけたものがこちらです。100点のゲームは存在しないという考え方からです。自分でも点数が思ったより低かったですが,前作のアーカム・シティがかなりよかったので期待して購入したのでその落差も含まれているのかと思われます。
 初めてシリーズを経験される方はには前作(シリーズ二作目)のアーカム・シティをおすすめしますが,バットマンが認知されていないゴッサムでどのようにジョーカーと邂逅するのか,珍しい昔のヴィランの活躍等気になる点があれば本作品をプレイするしかないでしょう。


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