ダークソウル2は続編であるからして,引き継ぎの要素を持っています。それはデザインについても言えるのです。敵のデザイン,プレイヤーのデザイン,システムのデザイン,そしてマップのデザインというように。これらは前作と関わりのあるものとして認識のできるデザインでなければ,続編とは言いがたいものになるのです。
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浸食された砦のimage art |
オープニングのデザイン
前作での主人公は,自分が不死/Undeadであることから北の不死院に収監され,デーモンを打倒するというイニシエーションを通して,物語のメインとなる舞台ロードランにたどり着きます。これはデモンズソウルでの拡散の尖兵戦へのオマージュでした。今作の主人公は不死/Undeadである印が身体にできたことで,その呪いを解くソウルの業に触れるため,物語の舞台であるドラングレイグを訪れることを決心します。森を抜け山を越え海を渡り,渦の中に身を投じて隙間の洞に到着した主人公は,前作までのそうしたイニシエーションを経ずに拠点となるマデューラにたどり着きます。
これではシリーズを踏襲していないことになります。どういうことなのでしょうか?
真に踏襲するもの
デモンズソウルのオープニングイニシエーションは,拡散していく霧によって世界から観測されなくなった場所にいくために水に浸かった暗闇を進んで行くシチュエーションを発端としていました。ダークソウルのオープニングは,願いを果たさないまま死んでいった上級騎士に見つかるまで,世界の終わりまで牢獄に入れられる不死/Undeadの運命を語るところからスタートです。 果たして主人公は上級騎士が救ってくれるまで,どれほど牢に入れられていたのでしょうか? 彼を覚えている人が存命中でないとしたら,デモンズソウルと同じです。もう誰にも観測されていない,名も無き存在なのです。
ダークソウル2のオープニングを思い出してみましょう。不死の呪いにかかった主人公は長い旅を経て隙間の洞にたどりつくために,渦に身を投げています。渦はただの海だったのでしょうか,いいえ,渦が開くと闇術のような霊体が舞う海でした。後述しますが,ソウルシリーズにとって海というものは深い意味を持ちます。その海に身を投げた主人公の装備は,異国シリーズです。「ミラ」や「ウーゴ」などの名前は与えられておらず分からない,意匠の汲み取れない「異国」なのです。そしてこの不死の呪いは,記憶を奪っていくものです。他者が認識できなくなり自分が何者なのかすら忘れていく呪いです。加えてこの呪いは,拡散していくのです。お互いを認識できなくなった不死/Undeadたちは,次第に自分のことすら分からなくなっていきます。それは,観測されなくなった世界なのではないでしょうか?
自分が自分を観測できないというのは,とても恐ろしいことです。オープニングをまとめると,今作ダークソウル2は記憶がとても重要な要素ということが分かります。
余談ですが,ミラのルカティエルがアン・ディールの館で消息を絶つのは自分で自分を観測できなくなり,それは存在の消滅と同意だからでしょうね。
マップのデザイン
さて,マップのデザインはどうだろうか。今作の拠点マデューラからは海が見えます。4gamer等の大手情報サイトで載せている最初のイメージアートも,海です。海の見える夕陽の風景は,何を意味しているのでしょうか。
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海を臨むimage art |
ソウルシリーズにとっての海とは,衰退のイメージです。より世界観に即していえば,闇のイメージ,人間のことです。
人間の世界を歩む
ダークソウルの世界は,神が衰退し人に虚栄をもって偽りの権威を保ち続けていく,神の衰退の物語でした。神は雷,はじまりの火を灯した火ですが,人間は闇です。続くDLCでは,闇に飲まれていった存在がどうなっていったかを描いています。神の正体を暴くと,アノールロンドは闇に包まれるのもそれが原因です。ダークソウル2の世界は,人間ばかりがいます。城にいるのも不死/Undeadや死者の王ニトの血を引くものであって,人間が治めている世界なのです。だから王城ドラングレイグは暗闇の中にあって,マデューラもハイデの大火塔も,これから夜になるすんでの刻=夕方なのです。人間の世界の暗示です。
こうした人間の世界がドラングレイグなわけですが,ここはとても不思議な土地です。なぜなら,不死/Undeadでない人間がとても多いのです。NPCの「マデューラにきた理由」を訊いてみると,力試しだとか商売だとか,なんとなくきてしまっただとかそれぞれバラバラで要領を得ません。
おまけに「不死の呪いを解くソウルの業は嘘」なんだとしょっぱなに言ってのける不死/Undeadも存在します。
彼らはどうしてマデューラにきてしまったのでしょうか。
その話は次回に回したいと思います。それでは。