今回は前回触れた「キャラクターのデザイン」から書いていこうと思います。
キャラクターのデザイン
ダークソウルⅡでは,多彩なキャラクターが前作に引き続き登場することになる。彼らはどういった踏襲を経て存在しているのであろうかという点を解き明かしてみたい。前作を踏襲するデザイン
シリーズを踏襲することに関して,前回の記事で「ダークソウルⅡと名前をつけたからには続編として踏襲すべきものがる」という点で触れた通りである。どのような点で踏襲されているデザインであろうかの例をこれからあげていきたい。
謎の老婆と火防女
今作の語り手である。火防女であるが,前作までの役割はもたない。後述するが,最初の火が消えた後の世界であるからであろうと思う。心を失くしたソダンと諦めたプレイヤー
今回も登場する,諦めたプレイヤーの分身であるキャラクターがソダンとなっている。彼は不死/Undeadの呪いを解くソウルの業の伝説を知っているようだが,自身は不死/Undeadではないようだ。というのも記憶がしっかりしている上,不死になっている(なりかけている)描写も見られないからだ。彼はCrestfallenと英訳されており,”心を失くした”に深い意味は無く意気消沈しているだけである。愛しいシャラゴアと白猫アルヴィナ
しゃべる化け猫である。どちらも過去のことに精通しており,プレイヤーの先をそれとなく暗示する。こうしたキャラクターごとの生まれ変わりとでも言うのであろうか,同じ役割を果たす存在は他にも多く確認できる。それ以外に繰り返す歴史を暗示させるキャラクターも多い。
アン・ディールの正体について
彼はヴァンクラッドの兄弟であり,ヴァンクラッドとともにドラングレイグを建国するが,後に方向性の違いから袂を分かつことになる。アン・ディールは竜に固執し屋敷にゴーレムを集めたり人体実験を繰り返していたが,後に姿を消すことになったとある。竜への固執とは,すなわち不死への固執である。とてもよく似た人物がダークソウルにいなかったであろうか。白竜シースである。彼は自身には竜のウロコがなく,故に竜であるのに不死ではないのかもしれぬ恐怖から生涯を研究に費やし,結晶という形で不死を実現させるまでに多くの人体実験を含めた実験を行なっていた。例えばスキュラは人体実験で生まれた聖女たちであった。
このことから,アン・ディールはシースのオマージュであろうことが容易に分かる。
忘れられた罪人の”罪”とは?
牢獄のみで作られた砦に隔離された忘れられた罪人であるが,彼は英訳ではThe Lost Sinnerである。彼は罪のため牢獄に入れられ,世界の終わりまで責め苦にあう。彼の本当の名前を覚えているものはいなくなったのであろう,それほどの長い年月牢獄に収監されている彼の罪とは「はじまりの火を作ろうとした」ことであることはゲーム内で説明されている。結局火を作ることには失敗してしまうのだが,はじまりの火をつくることが罪であるというのは面白い。火はダークソウルを弱め不死を救済するものではなかったのか?つまり,火が悪とされた時代なのである。闇の時代に彼は火を作るという罪を犯したのだ。
又,はじまりの火を作ろうとした人物はダークソウルでも語られていた。魔女イザリスである。彼女は最初の火が弱まったことへの対策として,火を作ることを考えた。しかし失敗し,彼女の名前を冠した都市と彼女の子孫は失敗の代償として混沌に包まれ火に没し,血族代々異形となる呪いを受けた。
ここでも踏襲が見て取れるのである。
踏襲を続けるのは続編を冠することが理由であるが,ストーリーは先に進めなければならないのがタイトルとしての役目でもあるように今作は感じられた。
ダークソウルがデモンズソウル2でなかったように,ストーリーは踏襲しないデザインであるべきなのだ。
「繰り返しの物語」との違い
デモンズソウルでは,ソウルを貪る古き獣がまどろみから解放され暴れ回っていたことが原因で世界が色の無い濃霧につつまれ拡散していってしまった。これを自身を人柱とすることで封印していた要人は主人公に古き獣をまどろみに導くよう頼む。
主人公は多くのソウルを集め,自分が古き獣となることで世界を拡散させ続けるか,火防女を犠牲に古き獣をまどろみに至らせるかを選択させられる。
どちらもソウルを奪われた世界は元に戻らず,後者を選択した場合古き獣の封印の要である新たなる人柱となるため展開はループする。
ダークソウルでは, 灰色の岩と大樹と朽ちぬ古竜ばかりがあった世界に最初の火が現れ,火が現れることで光と闇,生と死の区別がつくようになる。最初の火から王のソウルを見いだしたグウィンはその世界を打ち倒し,火の時代を作る王となる。
最初の火の核であった王のソウルがグウィンによって取り出されてから1000年後,最初の火は弱まっていた。最初の火が弱まるとともに,不死の呪いが人間たちの間にダークサインという形で現れるようになる。これは人間を朽ちぬ古竜のように不死とするソウル(ダークソウル)の業であったが,肉体は死なずとも精神は擦り切れ,人としての理を失うもの(亡者)が現れた。亡者はソウルを求め貪り食らう化け物として恐れられ隔離された。
王であるグウィンは呪いを食い止めるために最初の火を強くしようと王のソウルを戻すことを考える。しかし王のソウルは火の時代を作った戦友に分け与えてしまったため,自身に残されたものは不完全な王のソウルだけであった。彼は自身を薪に最初の火が消えないようにとどめる程度が精一杯であったため,かつての戦友を打ち倒し王のソウルを完全なものにする勇者を待っていた。
その勇者こそが主人公であり,完全なる王のソウルを自身の中に入れた主人公が薪となる選択か,王のソウルを完成させるも火を継がず闇の時代を訪れさせる選択をとることとなる。前者のルートは最初の火が燃え続ける展開となり不死人を救済することが出来るが,ダークソウルⅡに繋がらない。後者のルートは闇の時代が到来し,人間が統治する世界が到来する。ダークソウルⅡの世界である(前回の記事で「人間の世界を歩む」のセクションの通り)。
ダークソウルⅡでは最初の火が消えてしまった後の世界なのであろう,エンディングには火継ぎの様子が無い。最初の火の火の粉である篝火があるばかりである。
主人公は渇望の玉座/Throne of Wantにつき,闇に包まれてエンディングを迎える。
闇の時代の闇継ぎの儀式がこれなのであろうか。これは情報が少なすぎて推測にしかならないため,しばし要素の考察を挟みたい。
その要素とは,「椅子に座る」ことである。
椅子とはなんぞや
椅子は今作でもっとも目立つオブジェクトといっても過言ではない。王のソウルのあるアマナの祭壇の椅子,闇に魅入られた破門のフェルキンの座る椅子,宮廷魔術師ナヴァーランがうなだれている椅子,闇潜りのグランダルの腰掛ける椅子,そして生者の指輪をつけた王女デュナシャンドラの椅子……。
いずれも闇に関係の深いキャラクターが腰掛けているのが椅子である。
もう少し家庭的な椅子になると,亡者となっても記憶が確かである不思議な鍛冶屋レニガッツの座る椅子,ソウルに魅入られ傲慢となった時にもたれる防具屋マフミュランの椅子くらいである。
椅子とは闇=人間性に近づくための道具なのではないだろうか。
もう少しエビデンスのある考察に至るために,次回は以前触れた「記憶」とともにキャラクターの共通点と差異を考えながらオブジェクトを考えていきたい。