Everybody's gone to the Rapture -幸福な消失- の話 ※ネタバレあり

8月の12日に私たちのところにやってきたそれは、不思議な体験をもたらすゲームだった。

Everybody's gone to the Rapture -幸福な消失-』は住民たちがすっかりいなくなってしまったYaughton村一帯を舞台に、その失踪の謎を解き明かしていく一人称探索ゲームだ。


Yaughton村は閑静な(なにせ人がいないからね)住宅街で、他には公園や診療所、教会もある。教会は小高い丘の上にあって、素敵な外観をしている。

教会の中は村にあるものらしく質素ではあるが、しかし教会のもつ荘厳な雰囲気は、静謐な空間を私たちに意識させてくれる。

こうしたYaughton村で、プレイヤーは住民が残したラジオ音声や電話、テレビと地図、それから光をたよりに進んでいくこととなる。


プレイヤーが目にする光は周囲に影響を及ぼし、今は消失してしまった住民がその場で起こした出来事を再現するようになる。大量に鼻血を出して倒れたり、エンジンのかからない自動車に憤ったり、先に消えてしまった住民たちを心配したりするのはそのためだ。
これらは医者はインフルエンザだとして村の周辺一帯を隔離してしまうが、光の再現する出来事を見る限りインフルエンザではなさそうだ。なにか別の病気のようなものがあるようだ。

プレイヤーが目にする光の中には強烈な影響力をもつ光もあって、それらは人名のような名前を持っている。
いや、もう断言してしまおう。彼らは人名を持っていて、それも生前、光になってしまう前の人間だったときの名前なのだ。
彼らに触れるとその影響力は時たま出来事のあった時間まで再現することがある。それはいつもなにかがあった夜で、空の綺麗な夜のことだ。

こうした夜には共通の特徴があって、強い筋を伴った光が2本隣り合って空を進んでいく姿が見えることだ。それらは2組で行動していて、合わせて4本の光の筋から、地上に向けて光がやってくるのだ。

これは地上に向けてなにかを発射している戦闘機(戦闘機は通常1組2機単位で行動する) であることは、光の再現する出来事や電話で話している人々の会話から察せられる。
住民がなにかに感染してしまう原因である、「谷からやってきたもの」を拡大させないために村を隔離したのだが、それでも拡大が防ぎ切れそうになく空爆を要請したのが戦闘機がやってきた理由だ。
しかし、ここで考えて欲しいのは、戦闘機が爆撃をしたのであれば村は吹っ飛んでいるはずなのだ。だが村は健在だ(人間以外は)。戦闘機が落としたものは、たぶんこれだろう。

画像で見えるかわからないが、VXガスとラベルに書いてある。猛毒だ。あの有名なサリンと似た毒性を持つが、サリンは揮発性が高く屋外での使用にはあまり適さない。 VXガスは揮発性が低く、従って屋外でもポイントをしぼって毒性の高い地域を作り出すことができる。
人を消失させてしまうような感染症が広がったことへの対処が有毒なガスでの殺処分というのは、なんとも後味の悪い展開ではあるが、果たしてこれが意味のある対処であったかについては特に疑問が残る。
村のどこにも死体は残っていないので、感染した住民は毒で死ぬ前に消えたか、毒で死んだあとに感染した体が消失したことになるからだ。そして、この感染症の原因である「谷からやってきたもの」は毒の効果で死滅するような類のものなのだろうか。


「そこまでマジに考えるもんじゃないぜ」というゲームなのかもしれないが、気になってしまう。というのも、このゲームはミスリードの連続でプレイヤーをストーリーに引き込んでいくものを採用していたからだ。

「谷からやってきたなにか」に感染すると、「鼻血を大量に出して」死ぬ前に「消失して」しまう。インフルエンザのような頭痛も伴うが、これがインフルエンザではないことは住民誰しもわかっている。 感染経路は電話やラジオのような「電気信号」だと考える人もいて、登場人物の一人のケイトは「電気信号のパターン」が「交流を図っている」と考えている。その説を確認するために、ケイトは村の外れにあるタワーを使ってラジオで音声を流し続けている。
また、この村では「星の声」に代表される宇宙関連の書籍が流行していて、加えて「有界のあるカオス」を表すローレンツ方程式のパターンを落書きする行為も流行っている(それらしき絵も額装して飾っている家がある)。
これらが「感染」による結果なのかはわからないが、関係しているのかもしれない。これを拡大させてはまずいという人間の努力により、村一帯は空爆された。

最後までプレイしても、情報の組み立てがうまくいかなかった部分が多く、結局原因はなんだったのかはっきりしなかった。
ゲームのトロフィーに「原子力でパンを焼く」ことが条件のものがあるので、白血病などのセンセーショナルな部分を物語的にした原子力事故モチーフの話であることも勘ぐったが、どうやらこのゲームの舞台である80年代にはイギリスでは事故は起こっていなかったようだ。
「ある日から時計が8時7分を指して止まってしまった」というのも、電磁パルスの影響のような見方ができるかもしれないと思ったが、どうだろうか(といっても、なぜかひとつだけ、この影響を免れた時計があるのだが)。



もう少しプレイすれば、またなにかつかめるかもしれないので、その話はまた次回ということで。終わりにゲーム内の素敵な風景をご覧いただきたい。

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