ゴジラ 2014 感想

ゴジラ(2014)の記事へようこそ。
ゴジラ(2014)は1954年の特撮映画『ゴジラ』を皮切りにシリーズ化されたゴジラ・サーガの最新作で、2014年の7月25日(金)に日本では公開されました。

公開日にIMAX 3Dで観てきたので、感想を話していきます。





人物


この映画はゴジラ、久しぶりのゴジラですね。
それもハリウッドのゴジラです。
ゴジラは1954年の『ゴジラ』が最初なんですが、面白かったですね。ゴジラの伝説が残る島を怒れるゴジラが強襲し家族を失うシーンや、鉄塔から報道陣が死ぬ間際までゴジラを撮影していたシーン、芹沢博士が海に潜っていくシーンなどの、所謂名場面というものが数多くあったことは記憶に新しいものです。
今回のゴジラは監督がギャレス・エドワーズというイギリス人です。ギャレスはVFXクリエイターの出身でして、この人はCGがなんでもできることを知っているんですね。だからこそ、CGに頼らない部分を大切にしてゴジラ(2014)を作っているんです(cf.1)。

主人公はギャレスと母国を共にするアーロン・ジョンソンです。アーロン・ジョンソンは最近だと『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー(2013)』の主人公役をやっていました。アーロンはその作品ではヘタレでオタクな学生を演じているんですが、『ゴジラ(2014)』では軍人です。しっかりした意思のある眼をしてですね、任務をこなすんですね。そして、時に家族と離れる選択をする際に悩む姿を見せる。彼は2012年から配偶者を持ちましたから、家庭の夫としての演技にもより真実味のある演技がとれるようになって、ギャレス監督の目指した“現実と空想の融合”に素晴らしい役割をもたらしたましたね。

もう一人の主人公、渡辺謙は芹沢博士という役をこなしております。芹沢博士という役どころは、『ゴジラ(1954)』では自身の研究によって開発したオキシジェン・デストロイヤーでゴジラを葬るとともに、これが兵器として悪用されないよう自分もその中に沈んでいくものでした。今回の芹沢博士は、その実『ゴジラ(1954)』の山根 恭平博士のスタンスです。ゴジラを自然界の頂点捕食者、怪獣王として描く今作では、そのゴジラの神話的な役割を信じて「殺さないでほしい」と軍の提督に具申する熱を秘めた静かな研究者なんですね。

そして主役のゴジラ、このゴジラはいいゴジラですね。人間の味方のゴジラというと昭和の初期シリーズが思い出されますが、いいゴジラといってもそれはイコール人間の味方というわけでもないのが今作のゴジラが表現するゴジラでしょう。先ほど触れましたが今作のゴジラは自然界の頂点捕食者であり、調停者です。敵怪獣のムートーが目覚めたと同時に現れ、繁殖のために地上を荒らし回るムートーを狙います。ただし、ムートーの卵は狙っていないんですよね。これも調停者としての役割ですね。憎んでいるからムートーを倒すのではないということがよく分かります。そんな自然推しのゴジラゆえ、自然な動物っぽいかわいいところもあるんですよ。海に潜っていく時の首の上げ方が本当に犬にそっくりで、今から犬かきを始めるかのようなんですね。こういうコンセプトを守ることがお話の説得力につながります。

そして他のキャストに焦点を当てていきますね。しかしですね、この映画を観た方は分かると思いますが他のキャストとして脇役という紹介が申し訳ないほどフォーカスが当てられている人物が多いんです。
例えば主人公フォードを務めるアーロンの奥さん役をエリザベス・オルセンが務めていますが、彼女は劇中で家庭を表す物語の始まりと終わりを結ぶ役割を持たされています。そしてゴジラの恐怖を目の当たりにする市民たちの目線を代表する役割もあるんですね。「ゴジラは日本でウケないといけない!」と監督が豪語しているんですが、そのために子どもウケも狙ってか、劇中で子どもたちが大きな役割をしている。
初めてゴジラを見つける女の子は私たちに同じ目線を要求してきますし、アクシデントで親とはぐれた男の子は主人公フォードに何度も助けられますが、子どもらしく怪獣に喜んだりもするんです。
そんな大きな役割を持つ子どもを守る存在が、エリザベス・オルセンなんですね。バラバラになった主人公一家は最後に再会できますが、そのときの感動はハリウッドならではのこうした脚本の妙ですね。
エリザベス・オルセンといえば我々世代にはフルハウスのおチビ姉妹が一番分かりやすいでしょう。大きくなりましたね。もう25歳です。

それからブライアン・クランストン。劇中では主人公フォードのお父さんであるジョー・ブロディです。実父がジョー・クランストンなので、彼が劇中でジョーと呼ばれるのはどこか面白さがありますね。
ジョーはゴジラが出てくるまでの約一時間のうち、そのほとんどに関わってくるキーパーソンです。勤めていた原発事故で妻を失って職を追われ、事故の真実を追い求めて陰謀論を信じるようになり息子からはCrazyと言われてしまう。それでも諦めないんですね。彼が家族を失った様子を描いて息子に取り戻させる構図は分かりやすいハッピーエンドの構成要素で、そのために一時間かけていると言っても良いくらい物語に視聴者が入り込むための重要な役割を任されています。
彼は研究者で日本のジャンジーラ(JUNJIRA)の原子力発電所で働いています。日本らしくない地名の上、地震大国日本ではおよそ建設できない形の原発、それに富士山が近くにあるなど、およそ日本では考えられない日本ですが、これが海外の人に分かりやすい「NIPPON」なんでしょうね。

物語


今作のゴジラは神話的なゴジラで、地球を荒らして回るのは敵怪獣のムートーです。そして、人間はゴジラに対しても攻撃をしかけますが、最終的には対ムートーを目下の目標とします(囮作戦)。
これを考えると、平成ガメラへのリスペクトが見て取れますね。
ゴジラ作品としては最初のムートーの卵が見つかるシーンでゴジラらしい怪獣の骨格があるため、シリーズとしての繋がりを確りと意識した話を作ろうとする意思が伺えます。

カメラはカットシーンを多用しているんですが、これは「ゴジラを出すまで一時間」というギャレス監督の意向と、子ども目線市民目線の多い画面の構図、それに主役級の人物の多さを考えると納得の手法なんだと思われます。
色んな場所から場面から全世界がゴジラとムートーの存在を知ってしまう辺りは、テンションがドンドン上がっていくシーンですよね。
そしてムートーは全身が映るシーンが遠景近景ともにとても多いのに対しゴジラは近景では一部分しか出しません。それが逃げるバスの車内からの子どもの目線であったり、高度9000メートルから落下するパラトルーパーの目線であったりするわけで、臨場感溢れますね。最高です。ゴジラの巨大さを表しているのですね。

そんなゴジラがプロレスをするのですが、ここは是非劇場で確認していただきたい。悪役のムートーはヒールらしく飛んだり挟み撃ちをしたり狡猾なんですね。そこをゴジラはパワフルな尻尾や身体、腕を使って戦うんです。最後には放射熱線も吐きますよ。ここはウルトラマンっぽいですね。必殺技ですから。ゴジラの。
ゴジラは人間にとって、手をつけられない災害のように描かれます。自然の頂点にあるのでそのように描写されています。水害もゴジラの影響の一端ですが、人間は尋常でない被害を被ります。ここは日本人として、東日本大震災を少なからず思い出しましたね……。


怪獣映画へのリスペクトもありつつ、ディザスタームービーとしての方面に拡張された映画『ゴジラ(2014)』は突然の非日常を描くことを評価されたギャレス監督の特徴が如何無く発揮された作品です。ぜひご覧になってください。それでは。

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