This War of Mine がなぜ面白いのか

 Q.戦時下シミュレーション?

 『This War of Mine』は国が戦争に突入し戦火に晒されているとある町が舞台のサバイバルゲームだ。
 プレイヤーはランダムに与えられたキャラクターに加え、ランダムな季節の中スタートする。このキャラクターたちには彼らのプロフィールがあり、落ち込みやすいことや料理を得意とすることなど多くの特徴は彼らのステータスとして含まれている。そして季節は気温に影響し、人の病気になりやすさを管理している。
 彼らを実際に操っていて思ったのは、ボードゲームの有名な作品であるFantasyFlightGamesの『アーカムホラー』に似ているということである。
 『アーカムホラー』におけるプレイヤーの分身は名前、特徴、能力と所持品が与えられており、TRPGにおけるキャラクター作成よりは簡易であってもプレイヤーの考えを反映させやすい部分がとても似ているのだ。

こんなもの無意味だ。

『This War of Mine』は生き抜くために必要なものを探すことを夜のうちに行う。しかし、探しにいくことのできる場所は一夜に一箇所と限定されている。
 これをボードゲームでは「一回の手番で何ができるか」という観点で考える。それに見合うだけの価値があれば選択し、価値がなければ放棄するのが定石だ。
 そしてゲームに慣れてくるあたりの夜に以下の選択肢がプレイヤーに訪れる。一方は「手番に見合わないリソースしか残されていないような今まで何度も探索した場所に出かける」ことで、他方は「手番に見合うだけのリソースが残されているが、取引の出来ないだろう人間が警戒している場所に出かける」ことだ。
 ドラゴンクエストに代表される往年のRPGのようなプログラム上に感情のないキャラクターだけが住む世界では、もちろんプレイヤーは後者を選択するに違いない。
 だが、この『This War of Mine』の世界ではプレイヤーに『アーカムホラー』で言うところの正気度が設定されていて、一人が人道に反する行動をすればチーム全体に知れ渡り全員の正気度が低下する。最悪うつになって眠れなくなる人間も出てくるだろう。
 このうつ状態は言い換えれば状態異常で、プレイヤーがうつであるキャラクターに何か行動をさせようとしても途中で放棄してしまうようになる。

A.人間関係シミュレーション

「こんなもの無意味だ」という発言が目立つこのうつ状態は、本を読んだり隣人の役に立ったり、キャラクター間で励まし合うことでなんとか回復させることが可能になる。
 また、あまりにも傷ついたキャラクターがいれば他のキャラクターが独り言で心配する場合があることも、キャラクターたちに感情や性格をプロフィール以上に与えている要因となっている。
 結果として、プレイヤーに感情移入を起こさせやすくなり、物語を作っている感覚が芽生えてくる。しかしあらゆるステータスが数値化されていないため、物語が自分の力の及ばないところでも進んでいく感覚もあるところがまた『アーカムホラー』のようなライトなTRPGに似た楽しさをプレイヤーに感じさせるのだ。

A(another).リソース管理ゲーム

 以前、リソース管理ゲームとしての面白さも備えていると言った。
 あらゆるものをリソースとして考えるリソース管理の面白さはボードゲームにおけるリソース管理ゲームの多さから今もなおテレビゲームのできる以前よりずっと人間を楽しませ続けてきた歴史が証拠に他ならない。
 では、どんなリソースがこのゲームにはあるのだろうかという見方が分かれば、楽しさがもっと分かりやすくなるのではないか。
 『This War of Mine』は大きく日数に支配されていて、これがゲーム全体の情勢をある程度変化させている。交易レートが変化するのもその変化の表れである。この交易レートの変更はラジオがあれば事前に知ることができるのだが、ラジオを作るには素材がいる。この素材は他のものを作るのにも必要で、ほとんどが探索をして手に入れなければならない。この仕組みはリソース管理ゲームによくあるものだ。
  リソースは作業台で行われるタイプの家具と生活便利グッズの作成に必要なガラクタや木材、メタルワークショップで行われる工具と武器の作成に必要なガラクタと武器パーツ、食料のための肉と野菜と、嗜好品が主な素材となる。これらは交易や取引にも利用できるのがポイントだ。また、これらの素材は家の中を漁るか夜の手番を消費して探索することで獲得できる。夜は眠ることもできるが、睡眠を良質にするためにはベッドを作るために木材が必要であるなど、ジレンマのあるデザインもそれらしく好感が持てる。
 このようなものを作って生活を改善していく楽しさがあり、その方法は多岐にわたるためリソースを自分の思うように使っていける面があることが長所だ。
 例えば家具ステロイドはベッドと椅子などの家具を作りしっかりと生活のベースを整えていく方法で、体力が保つので毎夜スカベンジができる。盗人プレイをしてもよい。他人の箪笥から盗んだり殺して奪ったりすることもできるので、あとは精神面を克服すれば搾取するだけの生活が送れる。きっと昼間は寝るだけの生活になるのだろう。

まとめ

 登場人物の人間を感じられるようなシステムがあることが素晴らしい。それが見えない形で目に見える生活に必要な物質に関わってくることが「体は資本」ということを感じさせる。これらがサイクルのように循環していることに目を見張るべきである。
 サバイバル生活を体感するゲームとしても極上である。生活に必要なリソースを全員で奪い合うために発生する諍いが昼夜問わず起こる上に、それを獲得したとしても更に生活を安定させるために消費するか、その日を食いつなぐために消費するかの選択を迫られるまでの仕組みは高い評価を得る理由として相応しいものだ。

SteamほかAppStoreでも買えます(https://itunes.apple.com/jp/app/this-war-of-mine/id942935714?mt=12)。

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