前回までのThis War of Mine
戦争が起き国民全員がその日暮らしとなった日に出逢ったパヴレ、ブルーノ、マルコ。 三人は空き家を拠点として昼夜サバイバルをしていたある夜ブルーノが深手を負って倒れてしまう。なんとか手当をして助け合っている最中に訪ねてきたのは母を助けたい子どもであった。助け合いの精神が今回も発揮され、子どもたちに薬を渡すことを決めたチームはよりチームらしくなっていくのであった。昨晩は探索から早めに帰宅したのもあってか襲撃は起こらずに済んだようだ。彼らは何度も襲撃をする用意ができるほど余裕がなく 、無理をしているのかもしれない。
パヴレは戦争が始まった日から若干の風邪をひいていたので昨晩は生薬を飲んで眠っていたのだが、どうにもよくならないようだ。もしかしたら空腹が原因かもしれないからなにか食べたほうがいいのかもしれないが、食料はやはり無駄にできない。
そこでパヴレはひらめいた。昨晩マルコが持ち込んだ大量のガラクタといくつかの部品を用いて肉を増やす機械を作ればいいんじゃあないかと。それがこのネズミ捕り器だ。
一仕事を終え満足したパヴレは、もう残った材料がほとんどないことに悩んでいた。今夜もガラクタと木材をとってこないとまずいだろう。メタルワークベンチを改良してもっと高度な道具を作りたいし、家に空いた穴の補修も続けたい。これからくる冬に向けてストーブもいいものにしたいし、それに使う燃料も作らなければならない。雨水を濾過して集める器具もなるべく早く作りたい。やりたいことは沢山あるので、資材をもっともっと集めることが大事なのだ。今夜もリュックの大きなマルコに出張ってもらおう。
砲撃を受けた学校に再度訪れたマルコの手には、昨日は持っていなかったシャベルがその重みによって自身の存在を主張していた。シャベルがあればずっと早くこの学校に積もった土砂を片付けられるので、探索をさらに捗らせることができる。
そしてついに未踏の部屋に足を踏み入れていくマルコは人の気配を感じ取る。「また食料が盗まれた」とたしかに隣の部屋から聞こえて来る。マルコはそっと声のしない方に行くと、鉄格子を見つけた。これを壊すにはノコギリが必要になるだろうと確信し、その道を諦めたマルコが再び声のした方へ身を向けると、ドアから覗いて人の姿を確認できるようだった。果たしてその声は寝言であった。忍び足で侵入し脇を通り過ぎるとマルコは心臓が爆発しそうになった。
マルコは先へ先へと急いでいた。もしかしたら少し罪悪感があったのかもしれない。この学校を拠点としているグループの冷蔵庫には手をつけずにおいたのは、リュックがいっぱいだったという理由だけではないだろう。冷蔵庫のあったさきの廊下を渡って次の部屋でメモを見つけた。
冷蔵庫の裏にあったものは密造酒だった。きっと、きっとみんな喜ぶに違い無い。飲まずとも、欲しがる生存者は多いはずだ。交渉のタネになる。これぐらいはと自分に言い聞かせて、マルコはリュックに密造酒を押し込んだ。
密造酒をリュックに詰め込んだときにマルコは階上の声を聞いたのを思い出した。明らかに人の手で『集めた』ものに手をつけるのは初めてだったから、マルコは急に怖くなって学校を後にした。