Virtual experiences(因幡はねる, 有閑喫茶あにまーれ について)

Virtualとは、本来「事実上の」という意味です。


Virtual youtuber、Virtual streamer(以下まとめてVtuber)を日々追いかけるうちに、最近はその視聴体験になんとなく変化を感じつつあります。
特に、バーチャルライバーグループであるにじさんじの妹分、『有閑喫茶あにまーれ』というグループでは顕著です。
その変化とは、Virtual(仮想の)からVirtual(事実上の)への変化です。

有閑喫茶あにまーれは、架空の喫茶店の店長と店員合わせて5人グループが所属しているVtuberグループなのですが、その店長の因幡はねるは特にわかりやすいです。
彼女は初回生放送(https://youtu.be/-pHms1aiLGg)で、初っ端から3分間泣き出します。います? そんなVtuber。
泣く理由は、デビューまでにたくさん苦労して、それでもデビューできないかもしれないという不安と、そんな中デビューできたという喜びから。
「おい! 喫茶店の店長の設定はどうしたんだよ👿」と言いたくなるような、現実の等身大の女の子がそこにいる感じを彼女は作りだし、『因幡はねる』という存在を通して、中の人が人間であるということを前面に出しています。

他にも、「他のVtuberに浮気したらだめ」「(正直浮気しないのが難しいのはわかるので)浮気してもいいけどちゃんと戻ってきてね」と、本人の感情を前提とした視聴者に対する姿勢だったり、配信でする話の端々から本人の育ってきた環境や人となりが色濃く伺えたりするのも、その傾向を強めている要因だと思います。
そもそも彼女の所属する『有閑喫茶あにまーれ』は公式で「これは設定ですよ」と、年齢やキャラクター背景について仮想は虚構であることをかなり強めに主張しているのも面白いです。

又、『有閑喫茶あにまーれ』が5人グループというのもVtuber界に変化をもたらしていると思います。
5人グループというのはアイドルでは完全無欠の数字だと思っていて、5人になると長期安定するアイドルというのは非常に多いです(SMAP、嵐、ももクロ、℃-ute、Juice=Juice※デビュー前に6人 など)。
兄貴分のにじさんじは個人のイメージが強く、一期生二期生等の集団名はあれど、集団でデビューさせたが故の「グループ的楽しみ方」は薄かったように思われます(例えばJK組配信は時期が遅かったですよね)。
ただ、『有閑喫茶あにまーれ』はアイドル(手に触れない, 仮想の存在)としてはデビューしていません。グループ的楽しみ方のできる、個人個人が身近な集団(手に触れやすい, 事実上の存在)という魅力がある初のVtuberグループなのではないのかな、と感じてます。

この、アイドルよりは身近なグループといった感じで親しみやすさがあることが伺えるのが、初回のリレー配信後の反省会や、デビューして間も無くの数々のコラボ動画(https://youtu.be/Uk7Be36XOT4 他)、全員集合配信(https://youtu.be/pu5r3wFKhMU)です。
こうした配信を見てわかるのが、メンバー間の関係性を魅力として出していて面白いことです。
公式にグループ的楽しみ方を売りにしているのが如実にわかります。

現実のアイドルに倣って、先行しているVtuberアイドルはグループのみの楽しみ方を提供しています。
現実の芸能人に倣って、先行しているVtuberは個人での楽しみ方を提供する方が多いです。
そこをハイブリッド型にしたグループで一ヶ月でここまで成長しているというのは、今後のVtuber界ではお手本になるのではないでしょうか。

以前Vtuberについて触れた記事(https://goo.gl/fb/nBDHzR)では、Vtuberは今後一層特殊性を強く押していくんじゃないかという見立てをしました。

Vtuberは特殊な、異質な存在ではあるのですが、その中でも人間味を強く出すという異質さを放つ彼女たちが出てきたというのは、ますますVtuber界が盛り上がるきっかけになるのだと思います。
PUBGに興味があってVtuberに興味がなかった層に対し、Vtuber界PUBG最強決定戦でアプローチしたように。
(ちなみに『有閑喫茶あにまーれ』の稲荷くろむが第1戦の勝者です(https://youtu.be/IS7CW5B6Lps)。めちゃめちゃかっこいいので見てね)

今まではただアニメを見るように楽しむ仮想のコンテンツだったVtuberを、等身大の人間との事実上のやりとりへと変えてくれた『有閑喫茶あにまーれ』へ感謝を込めて。

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